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  • リリース日

    2000年 9月 1日

  • 再生時間

    10曲のトラック

Kid A(キッド エー)はイギリスのロックバンド、レディオヘッドの4thアルバム。イギリスでは2000年10月2日に発売された。イギリスでは発売一週間で30万枚以上を売り上げ世界的にも成功をおさめた。大々的なシングルやPVの制作を行わなかったにもかかわらず、Kid Aはアメリカでもアルバムチャートで1位を獲得した。日本でもアルバムチャートで3位に入るなど成功をおさめている。総売上は400万枚以上。

Kid Aのレコーディングはプロデューサーであるナイジェル・ゴッドリッチのもとパリ、コペンハーゲン、グロスターシャー、オックスフォードで行われた。このアルバムから曲作り、レコーディングを通してレディオヘッドはエレクトロニカサウンドへと接近していった。Kid Aが発表される以前、1998年に入った頃に発表されたバンドのツアービデオ作品「Meeting People Is Easy」において、ジョニーに対してトムが振りむき、次のように弁舌するシーンがある。「去年の僕らは最もイケてたバンドだったよな。世界中のどの人気投票でも一位だった。」「でもそんなものは何もかもクソだ。何の意味も無い。すべてが変わってしまった。完全にイカれてるだけだ」

このアルバムの音楽性に直接の影響を与えたものとしてはクラウト・ロック、ジャズ、20世紀の現代音楽などが挙げられる。レディオヘッドのサウンドの特徴であった3本のギターは過去のアルバムと比較すると鳴りを潜め、インストゥルメンタル的な使われ方をしている。ギター以外ではキーボード、オンド・マルトノ、ストリングスなどのサウンドが目立つ。メンバーは一貫して、このアルバムはポップレコードである、という主張を続けているが、未だにそれは議論の対象となっている。

Kid Aのような音楽性のアルバムが(かつシングルやPVなどの大々的なプロモーションを行わなかったにもかかわらず)商業的にここまで成功するのは、50数年間のポップミュージック史を紐解いてもそう前例のない特異な事例であると言える。 ただ、バンドの公式ホームページでの作品についてのヴィデオ配信などはされており、当時珍しかったインターネットによる口コミ手法での、秘匿性を逆手にとってのコマーシャル法なのではないか、とも当時盛んに意見された。実際にメンバーも当時「ネットの力を推し量ってみたかった」などの発言をしている(ちなみにレディオヘッドはメジャーシーンのバンドの中では特に早期に、先見性をもって公式サイトを開設・整備している)。

トム・ヨークは、「奴ら(音楽業界のマス連中)が思うほど、大衆の耳は馬鹿じゃない。聴こえのいいものだけを聞かせて金を巻き上げることが音楽産業だということに間違いはないけれど、許容され得る範囲はもっと広い」(SPIN誌)などとも、当時のインタビューで語っている。

発売当初はメディア/プレスから賛否両論を受けた作品であったが、現在では2000年代を代表する名盤との評価が確立しつつある。2003年、「ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500」において、428位にランクイン。2009年、同誌が行った企画「2000年代のアルバム・ベスト100」では、第1位に輝いた。さらに同年、米国で最も影響力のあるレビューサイトのひとつ、ピッチフォーク・メディアの「The Top 200 Albums of the 2000s」においても、Kid Aは第1位に選ばれている。

収録曲
作詞・作曲は、トム・ヨーク、コリン・グリーンウッド、エド・オブライエン、ジョニー・グリーンウッド、フィル・セルウェイ

1. エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス - Everything in Its Right Place – 4:11
10(4+6)拍子のエレクトリックピアノのフレーズを土台として、ヴォーカルの伴奏をサンプリングされたヴォーカルが行いながら進んでいく。当時まだロクに弾けもしなかった鍵盤楽器をトムが初めて本格的に弾き語りに使って作曲した曲であり、以降レディオヘッドの楽曲では、ジョニーだけでなくトムも鍵盤楽器を担当するようになる。ライブではニール・ヤングの"After The Gold Rush"などのピアノ曲の弾き語りをイントロにしてスタートすることが多く、主にステージ退場前のシメに演奏される曲。

2. キッド・A - Kid A – 4:44
音源版ではライブと違い、ビートを刻んでいるのはフィル・セルウェイのドラムではなくコンピューターサウンドである。ヴォーカルにエフェクトをかけられ聞き取りにくい歌詞は、CDトレイの裏を開けると見つかるようになっている。

3. ザ・ナショナル・アンセム - The National Anthem – 5:50
ベースイントロからダンスヒップホップトラックのようなドラムが覆いかぶさり、ホーンセクションのアウトロで曲が終わる。ベースラインはトムが昔から温めていたフレーズであり、自分が弾くと言い張ったため、録音されているベースプレイはコリンのものではない。ホーンの譜面を書いたのはジョニー。発表後ライブでは定番のナンバーであり、ジャズ風やロック風、トランジスタラジオを利用したノイズナンバー風など、様々なライブアレンジが存在する。また、アムニージアック発表後の一時期ではアウトロにハンティング・ベアーズを組み入れるなどしていた。

4. ハウ・トゥ・ディスアピアー・コンプリートリー - How to Disappear Completely – 5:55
ストリングス、オンド・マルトノ、ウォーキングベース、ディレイを掛けられたギターのアレンジにより、曲全体が4拍子と6拍子のポリリズムで進む。ライブアレンジではベースを抜いてオンド・マルトノを使用する事もある。歌詞の一部はR.E.M.のマイケル・スタイプとの会話からインスパイアされた。

5. ツリーフィンガーズ - Treefingers – 3:42
バンド初の純粋なインストゥルメンタル作品。下敷きになっているのは実はエドのギターであり、トムがそれをコンピューターで加工して仕上げた。音源版ではカットされているが本当は+1分程度長い曲で、映画『メメント』のサントラとして使用された際、完全版が日の目を見た。

6. オプティミスティック - Optimistic – 5:16
アルバム中数少ない、ギター、ベース、ドラムにボーカルといったロックの基本的な楽器のみでほぼ構成された曲。少しだけロック的な曲ということで、関係者の間では"Poptimistic"と揶揄されていた。発売当初に英語圏のオルタナティブ・ロックラジオで最もよく紹介されていたのはこの曲である。歌詞のインスピレーションは政治活動家ナオミ・クラインの著書「ノー・ロゴ」から。

7. イン・リンボー - In Limbo – 3:31
元の曲名は"Lost at Sea"だったが、アルバム制作中に唯一近況をファンに伝えていたエド・オブライエンのダイアリー中の言い回し「In Limbo(どっちつかず)」から借用し、このタイトルに変更された。トムは「ポリスのようだ」と語っている。

8. イディオテック - Idioteque – 5:09
テクノビートを取り入れた、「アルバムではまあそこそこキャッチーな」(コリン・グリーンウッド)曲。

9. モーニング・ベル - Morning Bell – 4:29
5thアルバム『アムニージアック』収録の同曲とは違うアレンジで、5拍子のビートが強調された曲調になっている。歌詞についてトムは「もの凄く残酷」「ブラックユーモアのようなもの」と語っている。

10. モーション・ピクチャー・サウンドトラック - Motion Picture Soundtrack – 6:59
アルバム中最も古い曲。『パブロ・ハニー』の頃には既に簡素なアコースティックギターバージョンとして完成しており、『OK コンピューター』ツアーでもバンドサウンドで何度か演奏されていた。『Kid A』収録のアレンジは以前とは大きく変わり、古風なハルモニウムでコードがつま弾かれ、曲の中盤ではサンプリングされたハープが使われている。一度曲が終了した後も無音の状態がちょうど60秒続き、音楽が再び現れ、その後二分弱の無音でアルバムが終了する。本来3つ目のヴァースが存在する曲だが、このアレンジではそれは意図的にカットされている。メンバーは元々この曲に関してビートルズのグッド・ナイトからの影響を明らかにしている。

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